19話. グリーンフラッシュと願い事2010/09/26 20:03

晴れて空気が澄んだ夕方に、水平線に沈む太陽が最後の瞬間に緑の閃光を発する。グリーンフラッシュだ。天候、時間、場所の条件がそろったときにだけ見られる現象で、見た者は幸せになると言われている。本当かどうかは知らないけれど、ハワイやグアムではグリーンフラッシュの瞬間に願い事をすれば、それが叶うという言い伝えがあるらしい。映画「パイレーツオブカリビアン」で、10年に一度しか妻子に会えなくなってしまったウィルが、グリーンフラッシュとともに現れるというシーンがいかにも神秘的で心打たれるところである。

グリーンフラッシュは、地球大気による光の屈折現象によるものだ。大気に斜めに入射した太陽光は大気によって屈折して地表に届く。大気の屈折率は、波長が長い赤色よりも、波長が短い緑、青でより高くなる。スネルの法則を用いれば、屈折率が高いときほど屈折する角度が大きくなることが容易に計算できる。赤よりも緑、緑よりも青がより大きな角度で屈折する。図に描いてみればわかるが、地平ぎりぎりまで落ちた太陽の光が地表のある一点に届く色は、最初が赤、太陽の傾きがさらに増すと緑、そして最後に青となる。青い光は大気のレーリー散乱で地表に届く前に無くなってしまうので、レーリー散乱の影響が少ない緑が、太陽最後の光として地表に届くことになる。これがグリーンフラッシュだ。地球規模で起こる壮大な光学現象である。緑の光が届くための角度条件が非常に限られた範囲内のため、ほんの一瞬だけ見えるのだ。フラッシュと言われる所以である。

僕はグリーンフラッシュを見たことが無い。そして、たまらなく見てみたい。今ではインターネットでグリーンフラッシュの動画を見ることはできるが、やはり、本物を拝みたいのだ。そのとき、何か一つ願い事がかなうとすれば、グリーンフラッシュが見られるということだけで十分だ。