88話. 光の国 ウルトラマンはなぜ地球を愛しているのか2013/03/10 21:08

ウルトラマンの故郷はM78星雲の光の国である。このM78星雲は地球から300万光年の距離とされている。僕たちが冬に目にするオリオン座のM78星雲は地球からは1600光年だから、M78星雲といってもまったく別物らしい。まあ、それは良しとしよう。それにしても、300万光年の彼方から地球の現在の窮状がなぜ瞬時にわかるのか。いやいや、それもここでは良しとする。

ウルトラマンがはじめて地球にやってきたのは僕が小学校低学年の頃だ。科学特捜隊の早田隊員が操縦していたビートル1号と間違って衝突してしまったが、早田隊員の命を救うために彼に乗り移って地球に滞在を開始したのだ。それ以来、なぜだか毎週現れる怪獣を退治するために、ウルトラマンは早田隊員にベータカプセルを点灯させることで飛び出してくる。しかし、ウルトラマンが地球上で活動できる時間は3分。なぜなら、光の国からやってきたウルトラマンにとって、地球の光は弱すぎて十分な時間を過ごすことができないのだという。ぼくは、光の国がどれだけ光に満ちあふれていることか想像を張り巡らしたものである。ところが、最近になって調べてみると、ウルトラマンの故郷の光の国は、26万年前に太陽が消滅し、今では地下に設置されている900台の原子力発電所で作られるプラズマエネルギーが使われているということだ。300万年光年も遠い星なのに26万年前の情報がわかるというのも不思議だが、それも良しとしよう。僕が納得できないのは、光の国という割にはその光が自然光ではなく人工の光であるという点である。この情報を僕が子供の頃には知らなかったのは幸いだった。自然だろうが人工だろうが、光には変わらないかも知れないけれども、なぜだか残念な気がするのだ。

さて、もう一つ納得しがたい点。ウルトラマンが帰ったあとも、光の国からは、ウルトラマンが属する宇宙警備隊のウルトラ戦士達が続々と地球に派遣されてくる。それも日本ばかりである。宇宙警備隊が組織されているからには地球以外の至る所で変事が起きているはずなのに、ずいぶんと特別待遇ではないか。いったい彼らはなぜここまで地球にこだわったのであろうか。

僕は、光こそがその謎を解く鍵であると考えている、光の国には、たいそうまぶしく光が満ちあふれていることである。しかしながらそれは人工の光だ。そんな人工の光の中で暮らす光の国の人たちにとって、太陽光や大気のレイリー散乱による青空などの自然光はさぞかし癒しの効果を持つのではないか。事故によって偶然、地球に滞在したウルトラマンは光の国に戻ってから、それをさぞかし吹聴したにちがいない。それを聞いたウルトラ戦士たちは、いちどは地球へ、と考えるようになったのだ。もちろん、命をかけて怪獣と対峙しなければいけないという職務はあるものの、それとは引き換えに風光明媚な地球で癒しの光を味わうことができるのである。 もしかしらこの時間にも、箱根の温泉あたりで地球人に姿を変えたウルトラ戦士が戦いの疲れをいやすために温泉につかり、シュワッチ~などと至福のため息をついているかも知れない。
これぞまさに観光というものである。