64話. 色の面積効果2011/11/27 22:07

家の壁の色を塗り替えた。色は色見本から選ぶわけだが、塗装屋さんから、自分が望む色よりも1段階濃い色を選ぶようにアドバイスを受けた。色見本は、一枚のシートに、20mm×30mm角の横長の色パッチが並べてあるものだ。同じ色でも、小さな面積の領域を見るよりも大きな面積を見る方が明るく見えるので、出来上がりの印象は色見本とは変わってしまうというのである。色の面積効果というそうだ。

なるほど、色見本には、さまざまな色が同じ台紙に並べてある。しかも、それらの色は白い境界で仕切られている。きっと、周りの色との比較や白い枠などに、色の印象が引きずられているのだろう、と、わかったつもりでいたが、それは早合点だった。
実際には、網膜の仕組みが関わっているらしい。視力に最も関係する網膜の中心部(中心窩)には、明るい時に働く錐体が集中し、その周辺部に暗い時に機能する杆体が分布する。このような構造のため、小さい面積を見るときには、主に錐体が視覚を支配している。大きな面積を見るときには、錐体周辺部の杆体も、錐体と同時に視覚に関わってくる。暗い所で機能する杆体は、色の見分けはできないが、錐体に比べて物を明るく感じる。大きな面積を見るとき、錐体による色情報に、杆体からの光量に関する情報が加わるから、錐体だけで物を見るときよりも、対象が明るく見えるのだ。もちろん、周囲の色などの影響も大きいとは思うが、目の構造上の機能が関わっていると知って、なんだか面白味が増した気分だ。

さて、家の色。塗装屋さんのアドバイスに従って、自分が考えていたものよりも1段濃い色を、色見本から選んだ。実際に塗りあがった壁を見ると、確かに色見本よりもずいぶん明るい印象だ。ただ、明るさだけではなく、色味も多少、狙いと外れている。まあ、出来上がりには満足しているので結果オーライだ。だいたい、芸術的センスの無い自分の狙いがもしもぴったりとあたっていたら、もしかしたら、家の雰囲気を台無しにする結果となっていたかもしれない。ともかく、家の壁の塗り替えが成功裏に終わったわけだから、この週末には祝杯をあげたことはもちろんである。