42話. 黎明 夜は必ず明ける2011/03/27 16:49

黎明。夜明けをさす言葉だ。「黎」は青黒いとか、暗い空という意味を表す。闇が支配する夜の暗い 空にも、やがて朝の薄明るい光がやってくる。これが黎明だ。厳かであり、かつ、期待と喜びを感じさせる言葉だ。

黎明の光の色は複雑だ。
まず、暗い空の東側がぼんやりと青く光を放ち出す。しだいに、その色は白みを帯び、やがて地平が赤く染まりだす。この頃には、地平から空にかけては赤から青紫に至る絶妙のグラデーションだ。

明け方、太陽の光は地球の影になり、地上にはまだ届かない。しかし、東の遥か上空では、太陽の光が大気層の上っ面を横切り始めている。地球の重力のため、塵や水蒸気などの大きくて重い微粒子は地表近くに分布し、高度の高いところには小さな軽い分子のみが分布する。だから、夜明けの始まりに地表から見える散乱光は、小さな分子に散乱された波長の短い青紫の光だ。やがて、太陽光がもっと低いところまで通過するようになると、大きな微粒子によってより長い波長の光が散乱されるため、その色は白みを帯びて来る。さらには、もっと時間が経つと、地表近くの塵などの影響がでてくるため、夕焼けの原理で赤い光が優勢となる。このとき、地平から西へ向かって太陽が大気層を通過する高度が高くなっていくので、それに応じて散乱される色も変化する。これが夜明けのグラデーションを生みだしているのだ。

「黎明」が正式には夜明けのどこまでを指すのかは知らないが、印象としては、東の空が明るくなり始めてからグラデーションが現れるまでの荘厳な儀式全体を指しているような気がする。

黎明の喜びは、夜の闇を耐えてこそ得られるものだだ。いま、日本の社会は天変地異によって暗い闇に覆われいる。しかし、明けない夜がないように、暗い時代が永遠に続かないことも歴史が示す通りだ。僕たちはいずれ黎明の時を迎えるはずだ。いまはそれを信じて行動し、そして鷹揚な気持ちでその時を待つだけだ。