43話. 寒光 いまは朧月2011/04/03 22:44

寒光;さむざむとした光 (デジタル大辞泉による)。
説明はこれだけだ。さむざむとした光とは、いったいどんな光だろうか。寒色といえば、青領域の色のことだ。とすると、寒光というのも、青領域の光のことを指すのだろうか。

どんな使われ方をするのかを調べていたら、中国の木蘭詩という漢詩の中に次の一節があることをみつけた。
寒光照鐵衣
意味は「寒々とした月光が軍衣を照らしている」ということだ。この詩での使われ方からすると、寒光とは寒々とした月光ということになる。たしかに、地球を熱する太陽の光とは対照的に、月の光は熱のないさむざむとした光といってよいかもしれない。冬の雪面を照らす冬の満月の光は、まさに寒光そのものだ。さむざむという言葉からはなんだかうら寂しさを感じるのだが、冬の月には、凛という言葉も良く似合う。北国生まれの僕にとっては寒光も懐かしい印象だ。

さて、いまは春。霞がかかる夜空にかかるのは朧月だ。きりりとした冬の月とはちがって、同じ月でもなんだか暖かみを感じる。これはこれで、なかなか良いものではあるが、冬好きの僕ちしては、しばらくのあいだ寒光に会えないと思うと、少し寂しい気分でもあるのだ。