28話. 人体からの発光 オーラ?2010/11/28 20:40

ホタルイカを食べていて、ふと思った。もし、人間がホタルイカのように光ったとしたらどんな感じなのだろうか。まず、夜、反射テープをわざわざ使わなくてもドライバーに認識してもらえるから安全である。ただし、体のどこかは露出していなければいけない。それから、暗いプールが幻想的。シンクロナイズドスイミングなんか、暗闇でやるとディズニーのパレードのように映えるかもしれない。
いっぽう、人間の営みの中には闇の中のほうが良い場合もけっこうあるので、そちらのほうが台無しになるデメリットのほうが大きい様な気もする。

幸いなことに人間はホタルイカのようには光らない。あるいは下村博士がノーベル賞を受賞したGFPを遺伝子に組み込めば緑色に光るヒトも作れるかもしれないが、常識ある世の中ではそんな人が生まれることはないだろう。だから、闇夜で光るヒトの心配などする必要はない。

ただし、これは人間の目で見える光(可視域の光:だいたい400~700nmの波長)での話だ。光が電磁波と考えるならば、可視光はその一部である。実際には400nmよりも短い波長の領域に紫外やX線などの光があるし、700nm以上の長い領域には赤外光が存在する。人間は摂氏36度5分くらいの体温を保つために自ら発熱をしている。そのエネルギー量はだいたい100W程らしい。そして、その熱を赤外線として外に放射している。波長は10μm前後だ。実際、空港などで旅行者の発熱チェックを行う熱イメージング装置は、この波長を検出してイメージングできるように設計されているから、その画像はあたかも人が光っているようなものとなる。もし、10μmくらいの波長の赤外光を感じる目を持つ動物がいれば、人間は闇夜でも発光していると見えるだろう。もっとも、人間以外の動物も発熱しているから、そこらじゅう光がうごめいていて眩しく感じてしまうかもしれない。

ところで、僕は子供の頃、少年漫画雑誌でオーラというものについて読んだことがある。オーラとは、生きている人間が発する特別な光だそうだ。なんでも、僕たちの身の回りには霊がうろちょろしているが、オーラがそれを遮断してくれていて、たまたま何かの拍子にオーラが弱くなった瞬間に写真を撮ると幽霊が写るという。オーラの力を弱めるためには、息を吐きつくし、少し我慢をすればよくて、それをすれば誰でも心霊写真が撮れるというのだ。僕はどきどきしてしまった。そんなことができるのならば、やってみるしかない。父の自慢のパールというカメラをこっそりと持ち出し、息を吐いて苦しくなるくらい我慢してから何枚も写真を撮ってみた。だけれど、それらの写真に霊らしいものは一切写ってはいなかった。その後、ことあるたびごとにこれを試してみたが、幽霊はまったく写ってくれない。考えてみれば、幽霊が写真に写るとすれば、それは可視の光を発していているはずだし、オーラがそれを阻むのだとすれば、やはり可視の光でなければいけないような気がする。とすると、オーラなんて言うものが本当に出ていると、それ自体が写真に写ってしまって邪魔で仕方がないはずなのに・・・。なんて理屈を考え始めた頃か、ようやくそのばかばかしさに気がついた。

さらにいえば、心霊写真。まじめに光の物理を考えれば、幽霊なんていうものが写真に写るわけはないのである。しかし、もし、本当にそれが写ったとしたら、新しい物理の大発見になるかもしれないなんていう山師的な考えもどこかにあって写真を見るたびに、何か変なものが写ってはいないかと探してしまう。残念ながら、それらしいものは、自分の写真の中から見出したためしがない。だから、いまのところ僕は常識的な物理学の信奉者だ。なんていうことをいうと、妻に、ロマンが無いと言われる。何がロマンだか分らぬが、それはそれ、真実は真実だ、と、余計に意地を張ってしまうのだ。