24話. 光は波長か?周波数か?2010/10/31 22:38

僕が生まれて初めて出会ったレーザはヘリウムネオンレーザ。暗室の闇の中、その赤い色は、まさに「光」の存在そのものだった。632.8nmという赤色の波長は、今でも僕の光の原点だ。

一般的に、光の色はその波長と対応して示される。可視光でいえば、380-450nmが紫、450-495nmが青、495-570nmが緑、570-590nmが黄、590-620nmが橙、そして620-750nmが赤だ。光源や光部品のカタログなどでも、光学特性の表示にはこれらの値が用いられる。ただし、これらは、光が進む媒質の屈折率が1のとき(真空に相当)の値である。

屈折率nの媒質を光が進むとき、その速度と同時に、波長も1/nに縮まる。たとえば水の屈折率はだいたい1.33(波長や温度によって異なる)だから、この中では、空気中(真空中とほぼ同じ)では632.8nmであったヘリウムネオンレーザの波長は475nmとなる。単純に波長だけで色を表せば、この波長は青に相当する。空気中では赤い光が水の中では青になってしまうのか?さらにいえば、太陽光に多く含まれるだいたい480nmくらいの青い光の波長は、水の中では360nm、すなわち紫外光になってしまうことになる。これが本当ならば、水の中のほうが、より日焼けが進んでしまうということになる。

実際には、水の中で赤い光が青になったり、青い光が紫外光になってしまうことはない。(もしなったとしたら、それは世紀の大発見だ)。すなわち、色を波長で表すということは、屈折率が1ではない媒質においては破たんしているといえる。屈折率に依存しない光の特性は周波数である。光の波が1秒間に何度振動するかということを表す本質的な量だ。もっといえば、光があると想定される場の中の中にある電子が一秒間に何度震えるかという量である。紫から藍色は660-790THz (T:テラは10の12乗)、青は580-660 THz、緑は530-580 THz、黄色が510-530 THz、 橙が480-510 THz、赤が405-405 THzである。ちなみに、光の周波数をνとすると、光の波長λ、屈折率nとは、λ=c/(n・ν)という式で表される関係をもつ。cは真空中の光速(およそ30万Km/秒)だ。この式を用いれば、nが1の時には最初の述べた色と波長の関係が光の周波数での記述と整合がとれていることがわかる。

それにしても、何故、屈折率によって値が変ってしまう波長が色を表す数字として使われ、屈折率には依存しない周波数は使われないのだろうか。もしかしたら、油膜などに見られる干渉縞のように、空間的な量である波長のほうは身近な現象で簡単に可視化されるけれども、時間的な量である周波数のほうはかなり高度な測定をしなければ調べられないということが影響しているのかもしれない。とはいっても、光の色を波長で表している限り、「屈折率によって色は変わりますか?」という質問が絶えることはないだろう。

僕たち人間は、古来より光と強く関わり、光を利用してきている。その割には光の取り扱いが雑である。せめて色を表す数字に関しては、光の本質的な量である周波数による表示にしてはどうかと思うのだが、こんな考えはマニアック過ぎるだろうか。