20話. 紅葉の効用2010/10/03 19:02

山から紅葉の便りが届く季節となった。紅葉(黄葉)は単に葉っぱが枯れて萎れていく過程だと思っていたが、実は理屈の通ったメカニズムがあるようだ。

夏の間、葉が緑なのは、光合成をおこなう葉緑素クロロフィルが葉に満ちているためだ。クロロフィルは450nmと700nm近辺に強い吸収を持つため、緑色をしている。このクロロフィルの光合成によって合成された糖分を木が栄養素として吸収する。ところが、秋になって気温が下がってくると葉っぱの付け根には水や栄養素が詰まり(離層というらしい)、合成された糖分は葉にたまっていく。この糖分は紫外光を浴びることで赤い色素であるアントシアンに変化する。一方、クロロフィルは分解が優位となる。緑色が褪色し、赤色が発色して葉が赤くなるのが紅葉だ。いっぽう、緑色が褪色し、葉にもともと含まれているカロチノイドの黄色が優勢になるのが黄葉である。

太陽光が弱くなる冬には、光合成で栄養分を得るよりも、新陳代謝が少ない本体のみで過ごしたほうが生きていくための効率が良いことから、木は落葉するのだが、それにしても何故わざわざ落葉の前に紅葉が必要なのだろうか。もしかしたら、冬の間は根から栄養を摂るために、葉っぱを栄養素でたっぷりと満たした状態にしてから自分のまわりに散り敷くという、実は賢い戦略の一環なのかしらん、などと、一人勝手に想像しているだが・・・

そんなことはともかく、紅葉は、何故、かくも僕たち(特に日本人)の心を揺さぶるのだろうか。僕たち日本人にとって、紅葉の時期はまた豊穣の時期でもある。人々は大地や山の恵みを満喫し、そして祭りに興じる。山は色とりどりの別天地だ。大昔からのそんな営みが、僕たちに紅葉を愛でる心を植え付けてきたのかもしれない。しかし、この時期がわずかな期間であり、そのすぐ後には不毛な冬が迫っていることも、僕たちはよく知っている。“滅びていくこと知っている”という切なさが、紅葉の美しさをいっそう引き立てているにちがいない。そして、もしかしたら、自然の饗宴の中でお祭り騒ぎをし、つかの間、精神を解放することで、来るべき冬に対して対峙していく心の準備を整えることができるという効果があるのかもしれない。

そんなことを考えていたら、たまらなく山の紅葉に浸りたくなってきた。今年を乗り切るために、僕自身にもお祭り騒ぎが必要だ。

コメント

トラックバック