11話. 青い影2010/07/25 22:07

 プロコルハルムというイギリスのグループの「青い影」。1968年の歌だが、いまだにいろいろな場面でメロディーを耳にする伝説の名曲だ。ところで、この歌の原題は「Whiter shade of pale」。色を失う、というような意味で、歌詞の中では、顔色が悪くなっていく、というところでこの歌詞が使われている。実際、この歌の中で、「青い影」に相当する言葉は使われておらず、日本語に訳した人がなぜこの題名にしたのか、ずいぶん興味がわくところだ。

  ところで、よく晴れた日の影を良く見てみると、それは青いことに気がつく。太陽光は、もちろんあの大きな太陽からやってくるのだが、太陽が地球から1億5000万Kmも離れているので、地球上では発散角は0.5°程度のほぼ平行な光となる。だから、太陽の光はくっきりとした影を映しだす。
  一方、太陽の光の一部は、地球大気の分子によってレイリー散乱される。レイリー散乱は波長の短い光を極めて強く散乱する現象だ。太陽光に対しては、波長が短い青の光が強く散乱され、これが、空が青い理由となっている。散乱は、光をありとあらゆる方向にまき散らす。だから、青空というのは青の光を四方八方にまき散らす光源が空いっぱいに隙間なく拡がっている状態といえる。
  太陽の光は平行なので、影ができるけれども、青空からの光はありとあらゆる方向からやってくるので影ができることはない。太陽光が遮られて影になった部分にも、どこからか青い光はやってくる。だから、晴れた日の影は青いのだ。

  もしかしたら、「青い影」は、

    たとえ太陽が遮られても、僕は青空となって君を照らし続けるよ

なんていうことを切なくささやく歌なのかしらん、などと勝手に憶測し、原詩をよく読んでみたのだが・・・ なんとも支離滅裂な歌詞だ。いったい何を歌おうとているのか、よくわからない。それは、光とは何か、と同じくらい謎である。そして、光とは何か、を考えるくらい魅力的でもある。